はじめに
つみたてNISAやiDeCoなどの長期積み立て投資の対象として、人気ランキングの上位に名を連ねているのが、S&P500や全世界株式などの市場平均のリターンを目指すインデックスファンドです。
長期投資のメリットとして、複利効果のレバレッジ(てこ)による資産拡大が挙げられますが、インデックスファンドは基本的に分配金を出さず無配の形となっています。
複利効果はそもそも保有銘柄の分配金がそのまま再投資されて初めて生じるものです。
それでは、インデックスファンドには複利効果は発生しないのでしょうか?
そうだとすれば、人気があるのは何故?というような疑問が生まれてくると思います。
私自身、投資を始めたての頃にとても不思議に感じていたのをよく覚えています。
今回は、同じような疑問を持ち、モヤモヤしている方に対して、回答したいと思います。
まずは、分配金とは何なのかを見ていきたいと思います。
分配金
分配金とは、決算の際に配られる利益のことです。
投資信託では決算の際に、運用した結果生じた収益を保有している口数に応じ、投資家へ分配する仕組みがあります。
ちなみに、分配金を支払う投資信託は、利益を株主に還元するため価値が減り、総資産総額と基準価額が下落します。
分配金が出ない場合
分配金なしの投資信託とは、その通りに口数を保有していても分配金が出ない投資信託のことです。
分配金なしの投資信託だと、運用益は分配金として株主に還元されずにそれ自身の再投資に回されます。
そして、再投資された結果、運用資産が増えて複利的な効果が得られます。
基準価額
投資信託の現在の値段を示す言葉として、基準価額というものがあります。
投資信託が保有する株式・債券などの金融商品の時価評価総額に、利息・配当金などを加え、運用に必要なコストを差し引いた残金額(=純資産総額)を総口数で割って算出されます。
これは運用結果によって変動していますが、株式と異なって、基準価額が公表されるのは投資信託の取引の申込み締切り後で、1日に1つの価額として公表されます。
つまり、投資信託の基準価額は分配金が再投資された価格となっているわけです。
ということで、標題の問いへの答えとして、インデックスファンドの複利効果はある、ということになります。
また、実際に複利効果がどの程度得られているのかという部分については、計算式が複雑で正確に把握することは難しいですが、おおよその効果を確認するための一つの計算式として、「72の法則」というものがあります。
「72の法則」は、資産を倍にするために必要な年数を計算するための式で、以下のシンプルな計算式で求めることができます。
【72の法則】
「72÷金利≒お金が2倍になる期間 (年) 」※近似値
1%で運用:72÷1=72 約72年必要
2%で運用:72÷2=36 約36年必要
3%で運用:72÷3=24 約24年必要
4%で運用:72÷4=18 約18年必要
5%で運用:72÷5≒14 約14年必要
6%で運用:72÷6=12 約12年必要
7%で運用:72÷7≒10 約10年必要
8%で運用:72÷8=9 約9年必要
9%で運用:72÷9=8 約8年必要
10%で運用:72÷10≒7 約7年必要
分配金あり・なしのどちらを選ぶべき?
それでは、投資信託を選ぶ際は、分配金があるものとないもの、どちらを選ぶべきなのでしょうか。
分配型と再投資型の投資信託のメリットとデメリットを簡単に見てみましょう。
分配型の投資信託
メリット
・定期的な利益を確保できる
デメリット
・分配金を出すことにより基準価額が減り、複利的な効果を得られない
再投資型の投資信託
メリット
・複利効果が期待でき、保有期間が長期なほど資産が増えていく
デメリット
・分配再投資が基準価額そのものに組み込まれてしまうため、利益を実感しにくい
・売る額とタイミングを決めるのが難しい
では、同一指数に連動した具体な投資対象では、どういった差異があるのでしょうか。
インデックス投資の最適解とされるS&P500の指数連動型投資信託を例に取ってみましょう。
配当が再投資される投資信託で知名度が高いものとして、次のファンドがあります。
・eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
・SBI・バンガード・S&P500
・iFree S&P500
配当分配型のものでは、米国の上場投資信託(ETF)が知名度が高く、選好されやすいです。
・VOO
・SPY
・IVV
上場株式・ETF・投資信託の主な特徴
ETF | 投資信託 | |
上場・非上場 | 上場 | 非上場 |
取引可能時間 | 金融商品取引所の取引時間 | 原則15時までに申込み |
取引価格 | 市場での時価 | 1日1回算出される基準価額 |
注文方法 | 成行・指値注文が可能 | 基準価額が分からない状況で購入・換金の申込みを行う(ブラインド方式) |
信用取引 | できる | できない |
購入先金融機関 | 証券会社 | 証券会社、銀行など |
コスト:購入時 | 売買手数料(証券会社によって異なる) | 申込手数料(ファンドや販売会社ごとに異なる) |
コスト:保有時 | 信託報酬(投資信託より低めの傾向) | 信託報酬(ETFより高めの傾向) |
コスト:売却時 | 売買手数料(証券会社によって異なる) | 信託財産留保額など(ファンドや販売会社ごとに異なる) |
配当・分配金 | 分配金 | 分配金(運用方針によって分配金が出ないものもある) |
再投資型の方が資産効率は良い一方、配当分配型は、税金によるリターンの減少はあるにせよ、定期的に確定利益としてのキャッシュフローが得られるというメリットがあります。
「分配益」か「複利」のどちらを取るかは投資スタイルの好みに分かれます。
私自身は、積立NISAとiDeCoの枠を4.5万円フルに使って複利効果での資産形成をベースに、投資に回せる家計余剰金の3〜5万円程度を、高配当の米国株ETFへ投資しています。
今後も、自分に合うスタイルで、いろいろ試していきたいと思っています。