個別銘柄の株価は長期的には業績をはじめファンダメンタルにより動くといわれていますが、短期・中期的には信用取引の動向をはじめとした需給要因も大きく株価に影響します。
株式投資の短中期のスイングトレードで利益を狙う場合、市場のうねりを掴み取りながら、なるべく安値で買い高値で売るというスタンスが基本となります。
相場アノマリー「天井三日、底値百日」
有名なアノマリー(相場格言)として、
「天井三日、底値百日」
というものがあります。
これは、
「株価が天井をつける本当に強く上昇する期間はほんのわずかで、残りの期間は株価の動きが弱く、調整期間が長い」ということを意味しています。
実際には、3日よりも上昇する期間は長かったり、底値圏に位置する期間は100日よりも短い又は長期化することもあります。
いずれにしても、「株価は低迷する期間のほうが長い」ということを念頭に置いて購入を検討するのが大切です。
買いはゆっくり、売りは素早くすべき
いったん上がった銘柄が調整すると長い期間、浮かびあがらないケースが多いためです。
一方で、売りのチャンスは短期間の限られたタイミングでしか訪れません。
- 株価上昇時はじわじわと少しずつ上がるので、買い場となるタイミングは長いと言える一方、
- 下がる時は急にくるので売り場のチャンスは少ない
ということを心掛けて市場に臨むことが大切です。
個別株の売買スタンス
短中期的な視点で相場を捉えると、
「循環物色」と言って、場面ごとに相場の主役を交代させつつ、
- 個別銘柄
- 業種
- テーマ
に沿う形でグループが代わりながら上昇すると見ることができます。
日々の経済ニュースに関連が深いグループの株価が反応し、それぞれに二進一退を繰り返しながら、指数が上がっていく形です。
経済ニュースなどにアンテナを高く張って次のトレンドをタイムリーに掴み、市場が反応するより早く売買アクションを取れるかが重要です。
この記事では、テクニカル指標を見ながら、売買タイミングを判断する方法について見ていきたいと思います。
チャート分析
株価のチャート推移を見ながら、相場のうねりを読み、売買タイミングを測る手法です。
複数の指標を参照しつつ、トレンドの転換を読み取るのが一般的です。
移動平均線
チャート分析で最も一般的なのが、移動平均線の推移に着目した手法です。
売買シグナルを測るために、「グランビルの法則」を参照してみると分かりやすいです。
移動平均線は、短期・中期・長期の3パターンに分類されます。
特に注目したいシグナルとして、
ゴールデンクロスとデッドクロスというものがあります。
- 短期の移動平均線が中期の移動平均線を下から上へクロスすること = ゴールデンクロス(買いのサイン)
- 短期の移動平均線が中期の移動平均線を上から下へクロスすること = デッドクロス(売りのサイン)
また、日足チャートの長期移動平均線である75日平均線と株価の乖離率でタイミングを測る手法もあります。
過去一定期間の日数(営業日ベース)の株価(終値)を合計して同日数で割って算出し、連続させたもの。
日足チャートでは短期が25日移動平均線、中期が50日移動平均線、長期が75日移動平均線となる。
例えば、
終値が75日移動平均線から10%以上マイナス乖離で買い、プラス乖離で売り
といった形で一つの物差しとしての使い方ができます。
ボリンジャーバンド
ボリンジャーバンドとは、
移動平均線に、過去の値動きから計算される値動きの幅の目安となる線を加えたもの
です。
言い換えると、「統計学的に価格がその移動平均線の上下のバンドの間で動く確率を想定したもの」となります。
ある一定の確率で値動きが収まりやすいレンジを『σ(シグマ)』と呼び、平均値からみて上のレンジを+1σ、下のレンジを-1σと呼びます。
これを2倍したものが+2σ・-2σになります。
大まかにいうと、高い確率で+2σ(標準偏差)と-2σのラインの間で価格は動くだろうという予測をもとに将来の価格の動きを予測するために使います。
正規分布の理論によれば、この+1σ、-1σに収まる確率は約68.2%、+2σから-2σに収まる確率は約95.4%です。
最大の特徴として、「視覚的にわかりやすい」という点が挙げられます。
- 高値側の標準偏差ラインにローソク足が近付けば「売り」
- 安値側の標準偏差ラインにローソク足が近付けば「買い」
といったような使われ方が一般的で、上下のラインの幅の変化なども株価予測に使われます。
オシレーター分析
買われすぎ・売られすぎを分析するための指標として、オシレーターに着目する手法があります。
RSI
「Relative Strength Index」の頭文字をとった略語。日本語に訳すと「相対力指数」です。
一定期間の相場における「値上がり幅」と「値下がり幅」を活用して、値動きの強弱を数値で表し、買われすぎなのか売られすぎなのかを判断する
と言った使われ方をします。
過去一定期間の上げ幅(前日比)の合計を、同じ期間の上げ幅の合計と下げ幅の合計を足した数字で割って、100を掛けた形で算出されます。
例えば、比率が上昇日7:下落日3の場合、RSIは70ということになります。
RSIは、特に一定のレンジ相場の場合に有効な指標です。
具体的にヒントとなる目安の数値は以下の通りです。
- 80以上 買われすぎ→利確?
- 30以下 売られすぎ→押し目買い?
MACD
MACD(マックディー)とは日本語で「移動平均収束拡散手法」と表現され、
短期の移動平均線と中長期の移動平均線を使用して描かれる2本の線から構成されます。
具体的には、
基本となる線(テクニカル名と同じMACDという線)と、MACDの移動平均線であるシグナルと呼ばれる2本の線の推移で相場を判断する
と言った使われ方をします。
ゴールデンクロス、デッドクロスといった「買い」と「売り」を判断させるタイミングが一般的な移動平均線と比べて、早く相場の転換をより早く判断するのに有効(トレンド転換のサイン)
と言われています。
市場全体の相場観を掴むシグナル
上昇相場で過熱感が出てピークが近くなったことや下落トレンドとなった際の底値が近くなったことのシグナルとして、参考となる指標をご紹介したいと思います。
騰落レシオが120%を超える or 70%を割る
騰落レシオとは、市場の値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率から、市場の過熱感を見る指標で、
いわゆる買われすぎ、売られすぎを見るためのテクニカル指標です。
- 120%以上 過熱気味
- 100% 中立状態
- 70%以下 底値ゾーン
と一般的に言われています。
参考:日経騰落レシオ
下記のグラフを見てみても、TOPIXの推移と騰落レシオには一定程度相関性が認められると思います。
新安値銘柄数が急増
新安値銘柄数とは、
一定期間で最安値をつけた銘柄の数
のことで、数値が急増したことは、下落相場の底が近いと考えられます。
移動平均線乖離率がマイナス25%を超える
上に紹介した移動平均線乖離率について、
200銘柄以上がマイナス25%を超えてきた時が相場の底
として、一つのシグナルとして読み取ることが可能です。
すでに触れた通り、移動平均線乖離率は、現在の価格が移動平均線からどれぐらい離れているかをパーセンテージ(%)で表したものです。
5日移動平均線で10%、25日移動平均線で15~20%、75日移動平均線で10%以上
離れると、反発し移動平均線に近づこうとするといわれています。
テクニカル指標まとめ
ここまでご紹介した内容について、
大和証券のサイトに、テクニカル指標とシグナルの一覧が見やすくまとめてありましたので、借用して掲載します。
上記に触れられていないものも多くありますが、説明は割愛し、参考程度に見ていただければと思います。
VIX・VXN指数
市場心理から相場観を測るための指標もあります。
代表的なものがVIX指数です。
VIX指数は通常10〜20の範囲内で動くとされ、
指数が30を超えてくると警戒領域
と判断されます。
ちなみに、2020年3月の新型コロナショックの相場急落局面でのVIX指数は85.47まで上昇しました。
日経平均VI
日本版恐怖指数が「日経平均VI」です。
VIX指数と同様に30が一つの目安とされており、
30を上回る状況が続くと恐怖感情が高まり相場急落が意識されていると言われています。
Fear & Greed index
投資家心理は、恐怖と欲望という2つの感情で動いています。
投資家が強い恐怖を感じると、株式が投げ売りされ、株価は適正価格よりも過度に下回ります。
反対に投資家が強欲になると、株価が割高にも関わらず益々買い上げられ、適正価格よりも過度に上昇してしまいます。
そのような市場を動かす投資家心理をCNN Moneyが見える化したのが、
「Fear & Greed Index」
です。
以下の7つの指標から計算されます。
- 株価モメンタム(勢い)/ S&P500と125日移動平均線との乖離
- 株価の強さ / NY証券取引所で52週高値と安値にタッチした株式の数
- 株価の振れ幅 / 上昇局面・下落局面における上昇株と下落株の取引量の差
- オプション / コール・オプション(強気)の取引量とプット・オプション(弱気)の取引量の差 / 割合。
- ジャンク債需要 / 投資適格債とジャンク債のイールドスプレッド(利回り差)
- 市場ボラティリティ / ボラティリティを測るVIX
- セーフヘブン(リスク回避)需要 / 株式と国債のリターン差異
これら項目が平均値からどの程度乖離しているかを0から100で指数化したものが「Fear & Greed index」です。
- 50以上で買い
- 50を下回ると売り
おわりに
相場は複雑な要素が絡まり合って常に動き続ける不確実な世界です。
未来を正確に読むことは不可能で、正解は誰にもわからず、リスクは常に付き纏います。
それが、「投資は自己責任」と言われる所以ですが、それでも過去の傾向を知り経験を積むことで、一定のセンスは着実に磨かれてゆくはずです。
自分なりの判断の物差しを持ち、これからも試行錯誤と反省を重ねながら、自分に合った投資スタイルを作り上げていきたいと思います。