インデックス投信の積立と並行して、ETFや個別株へも投資しています。
ETF・個別株は、中長期のキャピタル・インカムゲイン狙いの高配当・連続増配銘柄が大部分ですが、
キャピタルの増大も意識したい時期なので、トレンド分野のグロース株への投資も行っています。
この記事では、個別株投資を行う際の銘柄選定・購入の一つの判断基準・スクリーニング基準となるような指標についてまとめていきたいと思います。
株価の変動要因とは?
一般的に株価の変動要因は、
- 短期的には需給バランス(株式市場での需要と供給の活発の度合い)
- 中長期的にはファンダメンタル(会社の成長性や安定性、財務内容等)
で決まると言われています。
短期要因
日々の株価は、買いたい人が多ければ上がり、売りたい人が多ければ下がる、という基本メカニズムで動いています。
この需給の関係は、
- 重大な経済ニュースがあったり、企業決算のシーズンになると取引量が増える一方、
- 目立ったニュースが無かったり、夏休みなどで投資活動が低迷するシーズンなどは取引量が少なくなる
といった、短期要因が大きく影響します。
また、
- 短期で売買し利ざやを稼ぐ投機筋による空売りなどの信用取引
も、日々の株価が上下する要因のひとつとなっています。
中長期要因
株価上昇には、
ケインズの投資理論で、「株は美人投票」と言われているように、多くの投資家から注目銘柄されやすい環境にあることも重要です。
注目されるためには、会社がいかに優れた経営、将来性あるビジネスをしているかを世の中に知ってもらう必要があります。
最も良いアピールとなるのが、四半期ごとに発表される決算で、期待を上回る業績を出すことです。
また、
- 会社の将来的な成長性や安定性、財務内容等のファンダメンタル面で優れていること
- 時流に乗ったビジネスをしているかどうか
もポイントです。
長期投資では、5年以上先の成長・価値を見越して、
現在価値で割安と考えられる銘柄を選定してリターンを狙うのが主流です。
それには、トレンドに乗って伸びている業界・テーマを見定めることが大切です。
2021年時点では、人工知能(AI)・脱炭素化・フィンテック・半導体・EV・再生可能エネルギーなどのテーマが活況を呈しています。
そのテーマの中から、収益性・成長性に優れて、経営も安定している優良企業を見抜き、投資先として選定します。
その際の分析手法の一つがファンダメンタル分析です。
ファンダメンタル分析
ファンダメンタルズに着目した手法は、株を割安な状態で購入し、将来的な値上がりでのリターンを狙う中長期目線での投資に適しています。
ファンダメンタル分析の基本は、財務諸表を読み込むことです。
財務データと株価を照らし合わせ、銘柄のバリュエーションのレベルを判断します。
それを具体的な数値で示したものとして、経営指標があります。
バリュエーションの指標
株価の割安度を見るための主要な指標として、以下のものが挙げられます。
- PER(株価収益率)
- EPS(一株あたり当期利益)
- BPS(一株あたり純資産)
- PBR(株価純資産倍率)
PER / 株価収益率(Price Earnings Ratio)
株価が、「1株当たりの当期純利益(単に1株当たり利益、1株益ともいう)」の何倍になっているか
を示す指標です。
- 時価総額÷純利益、もしくは、株価÷一株当たり利益(EPS)で算出
- 投資資金を1株益だけで回収するのに何年かかるかを表す
- 成長期待が高いほど、PERは高くなる
- 業種によってPERが高い業種と低い業種がある
投資判断のヒントとして、以下の点を押さえておくと良いと思われます。
- 市場平均との比較や投資先となる会社の過去のレンジ、同業他社などと比較したりして、相対的な投資尺度として活用。
- PER 15〜10倍以下(平均12倍)が適正値の目安
EPS /1株当たり利益(Earnings Per Share)
「一株に対して最終的な当期利益(当期純利益)がいくらあるか」を表します。 また、当期利益を発行株式数で割ることで求めることができます。
数値が大きければ大きいほどよいとされます。
BPS / 1株当たり純資産(Book value Per Share)
「1株当たりの純資産額を表した金額で、株価が純資産の何倍まで買われているか」を示す指標です。
株価をBPSで割るとPBRを求めることができます。
PBR / 株価純資産倍率(Price Book-value Ratio)
株価が直前の本決算期末の「1株当たり純資産」の何倍になっているかを示す指標です。
- 会社が解散して資産を分けた場合に株主に分配される資産(金額)=「解散価値」を示す
- 会社の資産と現在の株価との比較であり、PBRが小さいほど株価が割安であることを示します。
投資判断のヒントとしてPBR 1.0倍以下が一つの目安です。
- PBR 1.0倍以下とは?
- 株価が企業の解散価値を下回る水準(割安)
- 不良在庫などの悪材料を市場が危惧
収益性の指標
次に企業の経営資源に対し、いかに効率よく収益を上げているかを知るための指標を見てみましょう。
ROE / 自己資本利益率(Return On Equity)
企業の自己資本(株主資本)に対する当期純利益の割合で、限られた経営資源でどれだけ収益をあげているか、すなわち自己資本に対する「経営の効率性」を示しています。
- ROE=当期純利益÷自己資本
- または ROE=EPS(一株当たり利益)÷BPS(一株当たり純資産)
- もしくは、ROE=純利益率 × 資産回転率 × 財務レバレッジ
- 純利益率=純利益÷売上高
- 資産回転率=売上高÷総資産
- 財務レバレッジ=総資産÷自己資本
「投下した資本に対し、企業がどれだけの利潤を上げられるのか」と最も重要視される財務指標です。
ROA / 総資産利益率(Return on Asset)
総資産に対する利益の大きさを表します。
- 当期純利益を総資産で割ったもので、総合的な収益性を示す財務指標
- 当期純利益÷総資産×100
ROIC / 投下資本利益率(Return on Invested Capital)
税引後営業利益を投下資本で割ることで求められる指標です。
投下資本利益率・事業活動のために投じた資金(投下資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているかを測ることができます。
上記の指標の中でも、割安度を測る際に特によく見られるのが「PER」「PBR」です。
また、急成長中の株は、投資家の高い期待度からEPSの四半期発表に先行して株価が上がるため、
PERが跳ね上がりやすい傾向があります。
より適正に近いバリュエーションを知る指標として、「PEGレシオ」があります。
PEGレシオ / Price Earnings to Growth Ratio
当期純利益の成長率を基準に株価の割安性を測定する指標です。
- PEGレシオ = PER÷利益成長率(EPS成長率)
- PERでは割高だが、将来的な利益の成長率を加味すると割安といった銘柄を発掘する際に重宝
- 投資判断のヒント
- 2倍以上であれば、割高。
- 1倍〜2倍未満であれば適正
- 1倍未満であれば、割安
- マイナスであれば、利益成長はマイナス
財務健全性の指標
経営は黒字でも、負債を期日までに返済できなければ、事業継続不可・倒産となり、
手持ちの株は無価値となってしまいます。
投資先の企業が長期にわたってビジネスを継続していけるかどうかの財務健全性を
見極めるために重要となる指標を見ていきましょう。
キャッシュ・フロー(CF)
営業キャッシュ・フロー
「本業でどれだけのお金を稼いでいるか」を知る指標です。
- 経営の健全性を測る上で最も重要なキャッシュフロー
- 営業CFは本業による稼ぎを表す=プラスの数値であることが大前提
- 売上に関わる現金回収分(商品等販売による収入)がプラスの要素
- 仕入に関わる現金支出(製造の経費である製造原価のうち現金支出分)、人件費や経費の現金支出分がマイナス要素
となります。
営業CFマージン
企業の売上高に対して、どれくらいの現金収支があったか、つまりどれくらいキャッシュとして獲得できたかを表す値です。
自由に使えるキャッシュをどのくらい効率的に稼いでいるかを知ることができる。高いほどもうけを出している会社といえます。
- 営業キャッシュフロー・マージン = 営業キャッシュフロー ÷ 売上高×100
- 15%以上を継続できている企業は健全かつ、利益を継続して生み出している企業
フリーキャッシュフロー(FCF)
会社が本業で稼ぎ出したお金から、事業維持のために必要な設備投資などの支出を差し引いた分で、自由に使えるキャッシュフローのことをいいます。
フリーキャッシュフローがプラスの会社は、堅実で安定しているという評価となります。
- フリーキャッシュフロー(FCF)=「営業キャッシュフロー」-「投資キャッシュフロー」
- 株主に配当したり、新規投資・借入金の圧縮を行ったり、手元資金の充実化をはかる目的に使われる
フリーキャッシュフローは、会社の今後の価値を決める基準として使われることがあり、フリーキャッシュフロー(FCF)の合計額を「企業価値」と呼ぶことがあります。
自己資本比率
企業の中長期的な財務安全性を測定する指標です。
- 自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資本
自己資本比率100%は無借金経営を意味します。自己資本比率50%程度あれば優良経営と言えます。
負債資本倍率(Debt Equity Ratio)
企業の借金である有利子負債が返済義務のない自己資本(株主資本)の何倍かを示す指標です。
数値が低いほど財務内容が安定していることを意味します。
- D/Eレシオ=有利子負債÷自己資本(株主資本)
- 日経全業種の中央値(目安)は0.3倍
有利子負債が多くても、内部留保としてキャッシュを蓄えている企業もあります。
より厳密に経営への負債状況の影響を測る指標として、ネットD/Eレシオがあります。
配当について
配当性向
株主還元の積極性をはかる指標の1つです。
- 1株当たりの当期純利益(EPS)に対する1株当たりの配当額の割合で計算される
- 配当性向(%)=1株当たりの配当額÷1株当たりの当期純利益×100
同指標の30~50%を目安に配当額を決定する企業が多いと言われます。
増配率
業績改善や株主重視策としてこの配当を増やすことを増配といいます。
- 増配を発表した企業は有望企業として注目され、株価が上がる傾向にあります。
- 連続増配は企業が安定的な収益を上げ続けていることの裏付けであり、そのような企業は要注目です。
DOE /Dividend on equity ratio(株主資本配当率)
株主資本に対して企業がどの程度の利益配分を行っているかを示す財務指標です。
配当性向とともに株主還元の状況を表す指標として注目されます。
- DOE
- = 配当総額 ÷ 純資産
- =(配当総額÷当期利益)×(当期利益÷純資産)
- = 配当性向×ROE
全業種の中央値(目安)は2.1%
DOEの高い銘柄は、配当性向かROE、あるいはそのどちらも高い銘柄です。
バフェットの8つの基準
「億万長者を目指すバフェットの銘柄選択術」に書かれているバフェットの8つの基準に照らし合わせて、スクリーニング条件を考えてみましょう。
投資判断のヒントまとめ
最後に、投資判断の参考となるスクリーニング条件をまとめてみました。
多くの項目を満たせているほど、優良企業と言えると思います。
- EPS (一株当たり利益) 20%以上増加
- 営業利益率10%以上
- PER 15%以下
- PBR 1.0倍以下
- PEGレシオ 1.0倍以下
- ROE 8%以上
- 営業CFが良い 黒字&増加傾向
- 現金保有量が右肩上がり
- 一株当たり配当金 減配なし&成長基調
- 自己資本比率50〜60%以上
- ネットD/Eレシオ 1.0倍以下
- 配当性向30~50%
- 連続増配5年以上