はじめに
高齢化社会の進行が深刻な日本では、年金制度の危機が唱えられて久しく、一般的な老後生活を営んでいくには個人で最低2000万を資金として用意しておく必要があると言われています。日本では長引く低金利で昔のような預貯金での資産拡大が見込め無い状況が続いています。
しかし一方で、資産形成を促す為の制度として、IDECO(個人型確定拠出年金)やNISA・つみたてNISA(少額投資非課税制度)の運用が数年前から始まっています。
これらの制度を利用し、仕事で得た収入を上手く活用して資産形成をする最も合理的な方法をご紹介したいと思います。(私自身が色々と調べて行き着いた中身の為、あくまで私見と捉え下さい)
早速ですが、老後のための資産形成の手段を一言で表すと、「複利効果を目的とした分散型インデックス銘柄への長期積み立て投資」です。
その理由を以下に紹介していきたいと思います。
複利のメリット
まずは複利効果について考えてみたいと思います。
複利とは
複利とは、複利法によって計算された利子のこと。
複利法とは、元金(がんきん)によって生じた利子を次期の元金に組み入れる方式であり、元金だけでなく利子にも次期の利子がつく。
したがって、各期の利子が次第に増加していく。投資や借金などでは、雪だるま式に利子が増えていくことになる。
Wikipediaより抜粋して引用
たとえば、元金を 10,000 円として、月利が 10%(すなわち 0.1)である場合に、複利法で計算する。
1か月後の元利合計は 11,000 円になる。
10000+1000=110002か月目は、この 11,000 円を元金として計算する。
11000+1100=12100 [1]3か月目は、この 12,100 円を元金として計算する。
12100+1210=13310 [2]つまり、3か月後には 3,310 円の利子がつく(1.1×1.1×1.1 = 1.13 = 1.331)。
元本に対して利子・配当が加えられることが定期的に繰り返されることで、資金が自己増殖していくのです。
ケーススタディ
これを具体的な家計を想定した実現可能な投資に落とし込んだ場合、どのようなイメージになるかケーススタディしたいと思います。
複利効果の計算には金融庁のサイトが便利です。
まずは毎月5万の積み立てを年率3%の想定利回りで20年積立を続けたケースを見てみます。
最終積立金額は16,415,100円となりました。
退職金が入ることを考慮すれば、目標の2000万円は充分達成可能な範囲だと考えられます。
次に積立額・期間は変えずに年率5%の想定利回りで計算した結果を見てみましょう。
最終積立金額は20,551,683円で、積立投資だけで目標額を達成できる計算となります。
毎月の積立額を増やしたり、積立期間を長くすれば更にトータルの金額を大きくすることが理論上可能です。
インデックスファンドの分散効果とリターン
では、目標の利回りを得るためにどんな金融商品に投資したらよいのでしょうか。
世の中には株式、投資信託、債券、REIT(不動産投資信託)、FX、ビットコインなど、様々な金融商品が存在します。
FXに代表されるハイリスク・ハイリターンなものから、債券のようなローリスクローリターンなものまで、当人のリスク許容度によってどのタイプを選ぶかは変わってきます。
中でも最も魅力的なものは、やはり「ローリスク・ハイリターン」の商品でしょう。
その理想に最も適っていると考えられるのが、インデックスファンドです。その理由を見てみましょう。
分散投資
投資で一般的にリスクが低いと言われるのが、分散投資です。
「卵は一つのカゴに盛るな」という投資の格言がありますが、これは分散投資の大切さを示すもので、ノーベル経済学賞の礎となった「ポートフォリオ選択理論」に裏打ちされた手法です。
簡単な説明になりますが、多くの種類の金融商品を保有していれば、一部の商品に多くの損失が出たとしても、他の商品は無事である可能性が高いので、損失を最小限に抑えられます。
インデックス銘柄には、日経一部上場の代表的な企業で構成される日経225や東証1部全銘柄を含むTOPIX、海外に目を向けて見れば、アメリカの代表的な企業で構成されるS&P500、先進国の企業を対象としたMSCIといった指数をベンチマークとしているものあるなど、多種多様です。
これらに投資すれば、分散効果はかなり高いと言えます。
リターン
次にリターンについて考えてみます。
より多くのリターンを狙うならば、今後成長が見込めそうな企業や経営状態が悪くないのにも関わらず、市場に過小評価されている企業のような、バリュー株や将来成長が見込めるグロース株を購入するのが一つの手です。
しかし、そのような銘柄を見極めるには株式の複雑な指数を解釈する必要があり、深い金融知識が要求され、かつ不確実性も大きいため、専門家ですら難しいのが実態です。
市場平均を上回る成果を出せているのもほんの一握りしかいないと言われています。
一方で、インデックス銘柄であれば、一般向けに明快な論理で、将来的に高確率でリターンが見込めることが説明可能です。
それは、「資本主義は右肩上がりの経済成長を前提としており、市場全体を投資対象とするインデックスファンドの値動きも同様に右肩上がりとなる」という考え方です。
次のグラフを見て分かる通り、米国ではGDPが100年スパンで長期的に右肩上がりとなっています。
短期的に見れば、不況によるマイナス成長となる時期もありますが、長期で見れば、年率3〜5%の平均値で資産の拡大が期待できると言えます。
アクティブファンド?パッシブファンド?
また、インデックスファンドの種類として、市場の動向を見ながら積極的に構成銘柄の選定や入れ替えを行うアクティブファンドと、先程挙げたような市場のベンチマークに連動するパッシブファンドの2つに区別されます。
どちらに投資すべきか?という議論ですが、統計的にはアクティブとパッシブのリターンに大差は無いため、手数料や運用コストが少ない分、「パッシブファンドの方がお得」という理論に私は同意します。
長くなりましたが、ここまで「複利効果を目的とした世界経済インデックス銘柄への長期積み立て投資」が有利な理由について説明してきました。
ここからは、実際に資産運用を開始するために何をどうすればいいのか?について具体的に見ていきたいと思います。
資産運用のはじめ方
具体的にすべきことは、ざっくり以下の3ステップに分かれます。
- IDECO&NISAの証券口座開設
- 月々の積立額の決定
- 投資対象の金融商品を決定
それぞれについて、以下に解説していきたいと思います。
IDECO&NISAの証券口座開設
まずは、冒頭部分でも述べたiDeCoとNISAを活用するための証券口座の開設です。
これらの制度を利用するメリットは、「節税効果」につきます。
iDeCoは、毎月給料から引かれる拠出額に対して、所得税が控除されます。
月々の拠出可能額の上限は、当人の社会的身分(国民年金の被保険者区分)により差があり、12,000円〜68,000円の範囲となっています。最低拠出額は5,000円です。
iDeCoの公式サイトに節税効果のシミュレーションがあるので、気になる方は試してみて下さい。
NISA・つみたてNISAは、非課税口座で購入した株式や投資信託などの金融商品の売却益や配当に対し、本来発生する約20%の税金が非課税となる制度です。
非課税投資枠は、NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円と定められています。
なお、金融庁のサイトにそれぞれ詳細が説明されています。
さて、口座開設の話に戻ります。数多くの証券会社が存在しますが、利便性などを考えるとネット証券がおすすめです。
中でも、取扱う金融商品が豊富で、取引の様態も幅広く選択できる、
- SBI証券
- 楽天証券
の2つがおすすめです。
私はSBI証券を利用していますが、楽天経済圏で家計を集約して楽天証券を利用するのも魅力的に感じています。
月々の積立額の決定
続いては、月々の積立額です。
職業や年収により状況が変わってくる部分ですが、ここでは厚生年金に加入しているサラリーマンを想定してみましょう。
つみたてNISAとiDeCoを利用している場合、毎月の拠出上限はそれぞれ約33,000円と12,000円で、合計45,000円です。
利回りを年率3%、運用期間を20年としてシミュレーションしてみると、総積立額は14,773,590円となります。このラインの積立を月々で最低限続けていければ、将来的に効果を感じられるリターンを受け取れるのではないでしょうか。
投資対象の選定
最後に投資対象の選定です。
ここはある意味将来を左右する重要なファクターではありますが、結論としては上記に紹介したインデックスファンドの中から選べば問題ありません。
少々悩ましいのが、分散をどんな割合にすべきか?という部分です。積み立ての配分としては、代表的な指標を全世界・先進国(米国)・発展途上国・日本とするインデックスからそれぞれ決定することとなります。
一番手っ取り早いのが、理論的に分散効果が高い全世界株への一括配分でしょう。
少しリスクをとって(微々たるものですが)、リターンを伸ばしたいと考えるのならば、米国・先進国・途上国へも配分を考えてみると良いかもしれません。
特に米国は今後も成長が期待できると言われているだけに、配分を大きくしておきたい投資先です。
日本ですが、単体でみると失われた20年が存在したり、深刻化が進む少子高齢化による人口減少の解決策が見つからない状況下、経済成長が続くのか不透明な部分がありますが、世界経済の中でみると影響力のある企業も多数存在するので、多くても半分以下といった具合で配分をかけておいても良いかもしれません。
自国というある種の感情的な側面も、ポートフォリオの一部として保有することに対する、プラスの働きかけになるような気が少々します。
ポートフォリオ一例紹介
最後に、参考程度ではありますが、積立ポートフォリオの一例をご紹介したいと思います。
現時点では、月々でつみたてNISAを33,000円& iDeCo(第2号被保険者)を12,000円の合計45,000円分積立を行っています。
具体的な銘柄は以下の通りです。
つみたてNISA
- SBI・バンガード・S&P500(米国主要銘柄):22,000円(毎月)
- ニッセイ外国株式インデックスファンド(MSCIコクサイ・先進国):11,000円(毎月)
iDeCo
- SBI・全世界株式インデックスファンド(FTSE・全世界):3,600円(毎月)
- e MAXIS Slim 先進国株式インデックスファンド(MSCIコクサイ):3,600円(毎月)
- e MAXIS Slim 米国株式(S&P500):4,800円(毎月)
バランスとしては、米国:6〜7割、先進国:2〜3割、全世界1割といった具合です。
米国と先進国に振り切っても良かったのですが、あえて全世界株も組み込みました。
積立可能期間もこの先長く残っていることもあり、成長期待の米国偏重気味の構成となっていますが、積立銘柄の変更はいつでも可能なので、定期的にリバランスも行っていきたいと思っています。
長い記事にお付き合いいただきありがとうございました。