数多く存在するETFの中でも人気が高い高配当ETFがSPYD・HDV・VYMの3つです。
これらが人気な理由としては、やはり手軽に質の高い投資ができる点が挙げられるでしょう
リターン度・リスク度・手軽さ
に優れる3拍子揃った優良投資先です。
投資を始めたばかりでも、投資先として安心感のあるETFです。
この記事では、これらのETFの特徴とポートフォリオへの組み入れ方を見ていきたいと思います。
ETFの特徴&比較
まずは、それぞれのETFの簡単な概要について見てみたいと思います。
比較すると表の通りです。
VYM | HDV | SPYD | |
運用会社 | バンガード社 | ブラックロック社 | ステートストリート社 |
ベンチマーク | FTSE ハイディビデンド・イールド・インデックス | モーニングスター配当フォーカス指数 | S&P500高配当指数 |
信託報酬率(%) | 0.06% | 0.08% | 0.07% |
配当利回り(%) | 3.0%程度 | 3.7%程度 | 4.5%程度 |
保有銘柄数 | 428銘柄 | 75銘柄 | 48銘柄 |
構成セクター | エネルギー・ヘルスケア・通信・生活必需品 | 金融・不動産等 | |
5年リターン(直近) | 11.5% | 7.8% | 9.8% |
特徴 | 分散型 | ディフェンシブ銘柄中心 | 景気に左右されやすい銘柄中心 |
メリット | キャピタルゲイン狙える&分散効果 | 相場下落時に耐性がある | 配当利回りが高い |
デメリット | 配当利回りが低い | 上昇相場ではリターンが劣る | 暴落時に大きく値下がりする |
経費率はどこも非常に安いですね!
ベンチマークも信頼度が高い指数を対象としているので安心です。
配当利回りで見れば、SPYD > HDV > VYM
分散度で見れば、VYM > HDV > SPYD
ですね!
過去5年の比較チャート
次に、直近5年間のリターンのチャート・グラフを見てみましょう。
トータルリターン(配当込) / Total Returns (including all dividends): Jul 01, 2016 – Jul 30, 2021
年平均成長率 / CAGR: Compound Annual Growth Rate.
(Assumes 252 trading days per year.)
値動き率 / Volatility &
最大値下げ幅 / Max Drawdown: Greatest percentage drop from the high (based on Total Return)
トータルリターン・CAGRの面ではVYM > SPYD > HDVの順となっています。
一方で、コロナショック時に特に顕著となったボラティリティ・最大下落幅では、SPYDが頭ひとつ抜けて大きいデータとなっています。
増配を加味してみる
増配力を加味し、将来的な高配当を狙うというスタンスも選択肢として考えられます。
増配を続けることができるのは利益を継続して出しているためで、企業自体に継続的に成長していくポテンシャルがあると考えられるので、インカム&キャピタル両面でのリターンが期待できます。
将来的に高配当を狙いたい場合、連続増配銘柄を集めたVIGというETFも有力な投資先候補となります。
- 連続増配銘柄 → 成長力のある優良企業
- トータルリターンはS&P500に匹敵する一方、暴落時の損失は相対的に小さく底堅い
- 運用コストの安さ
- 将来高配当化する可能性がある → 過去実績では10年で約2倍
増配率の比較
増配率15%程度の増配が続けば、受取配当金は5年で2倍になる計算です。
HDV | SPYD | VYM | VIG | |
1年 | 11.19% | -6.54% | 2.26% | 7.62% |
3年 | 6.56% | 4.70% | 6.57% | 6.17% |
5年 | 4.38% | – | 6.22% | 4.77% |
10年 | – | – | 10.29% | 8.16% |
トータル | 6.89% | 1.90% | 8.64% | 8.06% |
VYMもVIGと同等(10年超では上回る)の素晴らしい増配率を示しています。
HDVとSPYDは、ETFとしての歴史が浅く傾向を掴むためのデータとしては十分ではない可能性がありますが、過去に減配経験がある点は留意しておく必要があります。
詳細比較(リターン・指標・組み入れ銘柄・セクターバランス)
VIGも加えた各ETFのリターン・指標・組み入れ銘柄・セクターバランスについて詳しく見ていきましょう。
(バンガード社のHPから8/20時点のデータを引用)
VYM | SPYD | HDV | VIG | |
Vanguard High Dividend Yield ETF | SPDR® Portfolio S&P 500 High Dividend ET | iShares Core High Dividend ETF | Vanguard Dividend Apprec ETF | |
Average annual performance—quarter end | ||||
YTD | 16.00% | 24.98% | 12.05% | 10.40% |
YTD as-of date | 06/30/2021 | 06/30/2021 | 06/30/2021 | 06/30/2021 |
1-year | 37.10 | 51.97% | 23.65% | 34.39% |
3-year | 11.67% | 7.87% | 8.36% | 17.22% |
5-year | 11.44% | 8.91% | 7.13% | 15.41% |
10-year | 12.28% | — | 10.14% | 13.01% |
1-, 3-, 5-, 10-year as-of date | 06/30/2021 | 06/30/2021 | 06/30/2021 | 06/30/2021 |
Since inception | 8.50% | 10.25% | 10.26% | 9.95% |
Inception date | 11/10/2006 | 10/21/2015 | 03/29/2011 | 04/21/2006 |
設立以来の期間の違いで、長期リターンの比較は難しいですが、
直近の3〜5年のリターンを見ると、配当無視ではVIG>VYM>SPYD=HDVといった感じですね。
Equity characteristics | ||||
Vanguard High Dividend Yield ETF | SPDR® Portfolio S&P 500 High Dividend ET | iShares Core High Dividend ETF | Vanguard Dividend Apprec ETF | |
Number of stocks | 412 As of 07/31/2021 | 77As of 07/30/2021 | 75 As of 07/30/2021 | 247As of 07/31/2021 |
Median market cap | $150.8 billion As of 07/31/2021 | $29.6 billion As of 07/30/2021 | $135.6 billion As of 07/30/2021 | $169.0 billion As of 07/31/2021 |
Price/earnings ratio(PER) | 18.2x As of 07/31/2021 | 20.8x As of 07/30/2021 | 21.8x As of 07/30/2021 | 24.6x As of 07/31/2021 |
Price/book ratio(PBR) | 2.7x As of 07/31/2021 | 1.9x As of 07/30/2021 | 3.3x As of 07/30/2021 | 5.3x As of 07/31/2021 |
Return on equity(ROE) | 15.5% As of 07/31/2021 | — | — | 23.2% As of 07/31/2021 |
Earnings growth rate | 7.8% As of 07/31/2021 | -4.3% As of 07/30/2021 | 20.6% As of 07/30/2021 | 11.4% As of 07/31/2021 |
Foreign holdings | 0.0% As of 07/31/2021 | 2.8% As of 07/30/2021 | 0.6% As of 07/30/2021 | 0.0% As of 07/31/2021 |
Turnover rate | 11.1% As of October | 45.0% As of June | 75.0% As of April | 14.3% As of January |
Ten largest holdings | ||||
Vanguard High Dividend Yield ETF | SPDR® Portfolio S&P 500 High Dividend ET | iShares Core High Dividend ETF | Vanguard Dividend Apprec ETF | |
As-of date | 07/31/2021 | 07/30/2021 | 07/30/2021 | 07/31/2021 |
1 | JPMorgan Chase & Co. | Seagate Technology Holdings PLC | Exxon Mobil Corp | Microsoft Corp. |
2 | Johnson & Johnson | Iron Mountain Inc | Johnson & Johnson | Johnson & Johnson |
3 | Home Depot Inc. | The Interpublic Group of Companies Inc | Verizon Communications Inc | JPMorgan Chase & Co. |
4 | Procter & Gamble Co. | Public Storage | Chevron Corp | Walmart Inc. |
5 | Bank of America Corp. | Regency Centers Corp | Procter & Gamble Co | Visa Inc. |
6 | Comcast Corp. | AvalonBay Communities Inc | Philip Morris International Inc | UnitedHealth Group Inc. |
7 | Exxon Mobil Corp. | Welltower Inc | Merck & Co Inc | Home Depot Inc. |
8 | Pfizer Inc. | Equity Residential | Coca-Cola Co | Procter & Gamble Co. |
9 | Cisco Systems Inc. | Simon Property Group Inc | Cisco Systems Inc | Comcast Corp. |
10 | Verizon Communications Inc. | Federal Realty Investment Trust | Broadcom Inc | Oracle Corp. |
% of total net assets | 23.30% | 15.68% | 55.09% | 31.50% |
構成上位はどこも世界的な有名企業がずらりと並んでいます。
配当上位・均等割合のSPYDはやや異質といったところでしょうか。
Equity sector diversification | ||||
Vanguard High Dividend Yield ETF | SPDR® Portfolio S&P 500 High Dividend ET | iShares Core High Dividend ETF | Vanguard Dividend Apprec ETF | |
As-of date | 06/30/2021 | 07/30/2021 | 07/30/2021 | 06/30/2021 |
Basic materials | 4.41% | 2.44% | 0.21% | 3.67% |
Communication services | 5.91% | 6.36% | 6.47% | 2.86% |
Consumer cyclical | 5.57% | 4.97% | 3.65% | 10.47% |
Consumer defensive | 14.13% | 5.13% | 21.34% | 15.32% |
Energy | 7.12% | 12.88% | 18.34% | 0.00% |
Financial services | 22.05% | 23.84% | 5.41% | 17.18% |
Health care | 13.61% | 4.76% | 17.02% | 15.52% |
Industrials | 10.14% | 0.00% | 6.13% | 17.23% |
Real estate | 0.02% | 20.65% | 0.00% | 0.00% |
Technology | 9.77% | 5.50% | 10.40% | 14.93% |
Utilities | 7.27% | 13.48% | 11.04% | 2.81% |
構成セクター割合の傾向としては、
- VYM
- 金融セクターの割合がやや高いが、全体的にバランスのよい構成
- SPYD
- 唯一不動産セクターが組み込まれている。金融と不動産で半分近くを占めており、シクリカル(景気敏感)に寄るためボラティリティ高め。
- HDV
- エネルギーセクターの割合が他に比べ高いのが特徴的。全体的にディフェンシブの割合が高めなので、リセッションに強いが、景気拡大期の伸びは劣る可能性がある。
- VIG
- ハイテク・ヘルスケア・一般消費財が構成セクターのメインとなっている。
- (これらのセクターは、直近10年で市場平均を上回るリターンを残している)
- 一方でエネルギーと不動産は一切含まれていない。
ポートフォリオ組成のヒント
配当に主眼を置いたETFへの投資スタイルとして、大きく2つに分けられます。
- 配当利回り重視(インカムゲイン重視)
- トータルリターン(インカム+キャピタルゲイン)を重視しつつ、将来的な利回りアップも狙う
インカムゲイン重視
○SPYDとHDVを組み合わせたポートフォリオ
それぞれ配当利回りの高いSPYDとHDVをバランス良く保有することで、セクターバランスも保たれ、高い相乗効果が得られます。
- 2つを保有する事で幅広いセクターをカバーできる。
- 運用方針の違いから主要投資セクターが違う。
- 好景気時と不景気時に対応できる。
- SPYDは景気敏感株が中心。
- HDVは景気に左右されないディフェンシブ銘柄が中心。
一方で高配当重視のため、GAFAM・ハイテクグロース株がほぼ含まれていません。
資産効率アップかつ分散をより幅広くするためには、
ハイテクグロース中心のQQQなどの他のETFや個別銘柄をサテライト運用し、足りないセクターを埋める選択肢もアリです。
ポートフォリオの利回りを下げたくないので有れば、少し特殊ですがハイテクセクターのカバードコールETFのQYLDも少しトッピングしてみるのもよいかもしれません。
トータルリターン(+将来的な高配当)重視
○VYM & VIG
ディフェンシブセクターを押さえつつ、成長力の高いセクターもバランス良く組み込んでいるこれらのETFは、増配率も年率10%程度と高く、低リスク・高リターンです。
さらに細かく分けて、インカムゲインを優先したいならVYM、キャピタルゲインを優先したいならVIGといったところでしょうか。
投資タイミング
一括投資か分散投資どちらがいいかは好みが分かれる部分です。
まずは、メリットとデメリットをそれぞれ整理してみましょう。
最終的には自分に合ったスタイルという結論でしょうか。
個人的には、相場の下落時を狙って一括投資を行い、積極的にリターンを狙いにいくスタイルを推奨します。(過去の傾向を見て、指標から一定の購入タイミングを読み解くことができるため)
*参考 購入タイミングの目安
相場の動向を図る指数として、VIX指数というものがあります。
これは、別名・恐怖指数と呼ばれるもので、市場に何らかのリスクが高まったタイミングで上昇する指数です。
一般的には、VIXが20を超えてくると、市場に警戒感が高まっている状態です。
VIXが30を超えたあたりは、逆張りでの買い場と言えるでしょう。
下のグラフは各ETFとVIXのボラティリティを示したものです。
先行してVIXが大きな動きを示すと、それぞれのETFが追随して変化しているのが読み取れます。