令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、男女問わず育休を積極的に取得するための環境づくりを段階的に雇用者に義務づける内容となりました。
雇用者は、子供が生まれる従業員に積極的な育休の打診を行うことが義務付けられます。
これにより職場での育休取得への意識・理解が段階的に深まれば、今後育休取得率も徐々に高まっていくものと思われます。
しかし、育休取得のネックとして金銭面の問題からは目を背けられません。
国から一定額の補助が出るにせよ、特に貯蓄が進んでいない若い世代には重くのしかかってくると思われます。
特に、一家の稼ぎ頭である男性にとって、収入減少は生活問題に発展しかねないので、背に腹は代えられぬといったところでしょうか。
2021年度の内閣府の調査でも、約3割の男性が1ヶ月以上の育休取得をためらう理由として収入の減少を挙げています。
ちなみに、育児休業中は社会保険料の支払いが免除されるというメリットもあります。
この記事では、その制度をうまく利用して社会保険料を最大限に浮かせ、育児休業中の収入の減少を少しでも軽減する方法についてみていきたいと思います。
育児休業給付金について
育児休業給付金とは?
育休中は、基本的に給与は出ませんが、手続きを取れば育児休業給付金が給与額面の50%〜67%分支給され、休業期間中の社会保険料も免除されます。
育児休業給付金とは、簡単にいうと、育児休業中に国からお金が給付される制度です。
- 産前産後休業
- 2021年現在では、女性のみ取得可能
- 育児休業
- 父親・母親に関わらず、子どもを養育する義務のある労働者が法律に基づいて取得できる
問題点は、この間収入がなくなってしまうことですが、休業後の復職が前提であれば国が給付金を拠出します。これは、育児休業を取得することや取得しやすくすることを目的としている為です。
なお、手続きは原則として、雇用主である会社が申請手続をハローワークに行います。
また、育児休業給付金は、母親と父親で支給期間が異なります。
- 母親の場合
- 産後休業期間(産後8週間以内)の終了後、その翌日から子どもが1歳となる前日までの育児休業期間。
- 父親の場合
- 子どもの出生当日から1歳の誕生日を迎える前日までの育児休業期間。
*その他、支給金額、利用条件などは夫婦に違いはありません。
*夫婦同時に申請・取得しても、給付金はそれぞれに支給されます。
支給期間は延長可能?
保育所などの施設に子どもを預けられないなどの理由で仕事に復帰できないときは、支給期間を延長できます。
延長の条件を満たせば段階的に、
- 1歳から1歳6ヵ月まで
- 1歳6ヵ月から最大2歳まで
延長することが可能です。
ちなみに、
1歳の時点で、2歳までの延長を求めることはできない
ので要注意です。
給付金の給付条件
給付期間前の条件
- 雇用保険への加入
- 育児休業の開始前2年間で就業日が11日以上である月が12ヵ月以上あること。(第1子の育児休業取得や本人の疾病などの除外特例あり)
ただし給付期間中も、以下条件に該当している必要があります。
給付期間中の条件
- 賃金月額(休業開始前に受け取っていた賃金)のうち8割以上の金額が支払われていない
- 期間中の就業日数が月10日(10日以上ある場合は、就業時間が80時間)以下
計算方法
1ヵ月あたりの給付金支給額は、以下の計算式から算出されます。
・育児休業開始から180日:
[休業開始時賃金日額×支給日数(通常は30日)]×67%
・育児休業開始から181日目以降:
[休業開始時賃金日額×支給日数(通常は30日)]×50%
申請時に提出する「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」をもとに、育児休業を開始する前6ヵ月間の賃金を180で割った金額
*賃金とは、残業手当、通勤手当、住宅手当などを含む給与額面)のこと(支給上限・下限あり)
支給開始日
育児休業給付金の支給日は原則2か月に1回です。
例えば
4月20日から育休が始まった場合、「4月20日~5月19日分」+「5月20日~6月19日分」を、6月20日以降に申請する
ことになります。
なお厚生労働省によると、
育休手当は支給決定日からおよそ1週間で指定の口座に振り込まれることとなっています。
ということは、
初回の支給日は少なくとも育休開始から67日(2か月+1週間)はかかるということになります
押さえておきたいポイント
社会保険料の免除
育児休業を取得した月は、
原則として社会保険料〔健康保険料(40歳以上の場合は介護保険料も)、厚生年金保険料〕が免除
となります。
年金への影響
将来の年金には、登録されている標準報酬月額が反映されます。
育休で免除された期間も保険料を払ったものとして金額に反映されるため、受け取れる年金は減らない
ということになります。
社会保険料免除の算定方法
社会保険料は月単位で考えます。
育児休業期間の社会保険料免除については、
法的には「育児休業を取得した月から育児休業を終了した日の翌日の属する月の前月まで」保険料が免除されると定められています。
ちなみに、一ヶ月未満の育休取得の場合は、育児休業を取得した日と終了した日の翌日が同じ月だと、社会保険料は免除にはならないということになります。
賞与に係る保険料も免除
ボーナスが支給される月の月末に育児休業を取得していれば、
ボーナスに掛かる社会保険料も併せて免除
になります。
ボーナスの社会保険料が免除されるのはインパクトが大きいですね!
年収600万円としたの場合のシミュレーション
月給36万円・ボーナス年4ヶ月(年収約600万円)の人をモデルケースとして、シミュレーションしてみましょう。
社会保険料の基となる賃金月額=36万円だとすると
- 健康保険料は約1万8,000円(2018年)
- 厚生年金保険料は約3万3,000円(2018年)
合計 約5万1,000円
が基本的には毎月社会保険料として給与から控除されます。
なお、ボーナス70万円とした場合、賞与分の保険料として、
- 健康保険料は約3万4650円(2018年)
- 厚生年金保険料は約6万4050円(2018年)
合計 約9万9,700円
が控除されることになります。
合計すると、ボーナス月には、
約15万700円も社会保険料が免除
されることになります。
一般的な1ヶ月の残業代よりも遥かに大きい金額ですね!
おわりに
繰り返しとなりますが、要点は、
月末の最後の日が育休に含まれていれば、その月の社会保険料は控除される
という点です。
もちろん社会保険料免除の最大化を第一として、育児休業のスケジュールを組むことは育休の本質から外れるためおすすめはしませんが、家計のための節約を考える上で、頭に入れておきたい制度だと思います。
今回のような国の積極的な少子化対策への施策がうまくいき、安心して仕事と子育てが両立できるような社会へと変わっていけば良いですね。
日本の人口が再び増加基調へと戻っていけば、今の子供たちの未来も間違いなく明るいものへと変わっていくはずです。