パタゴニアのトレッキングの定番と言えば、パイネ国立公園。氷河の景観が望める公園内はトレイルが数多く整備されており、日帰り〜1週間までバリエーションあるトレッキングが楽しめる。
ハイライトは三本槍の頂を持つトーレスデルパイネ。頂が朝日に染められ輝くさまは紛れもない絶景であり、一目見てみたいと思い訪問した。今回は2泊3日でWルートをなぞる感じで歩いて見た。
期間は2017/11/7〜2017/11/9。
パイネ国立公園とは
トーレス・デル・パイネ国立公園はチリの首都サンティアゴから約3,000キロ南に位置する[1]。1959年、2,400平方キロにわたって山・氷河・森林・湖などが広がる豊かな自然が評価され国立公園となった[1]。公園内の最高峰は標高3050mのパイネ・グランデで、トーレス・デル・パイネ(パイネの塔)のアゴスティン峰が2850mで2位となる(ロンリー・プラネット誌より)。
高低差があり、草原からツンドラ地帯、山岳といった様々な気象条件下に豊富な高山植物が茂る。こうした風景を楽しむためのトレッキングなどを目的とした観光客は年間10万人を超える[1]。
国境線沿いにあり、アルゼンチンのロス・グラシアレス国立公園とは一部が接している。2011年12月に山林火災が発生し、翌年1月までに1万ha以上が焼失した[1]。
Wikipediaより抜粋して引用
低緯度特有の気象条件でもたらされた自然の景観が美しく、トレッキング客に人気がある一方、10年近く前に起きた大規模火災の爪痕が今も残っており、近年は環境保護のための対策も強化されているようだ。
事前準備
公園内での宿泊について
パイネ国立公園園内での宿泊に関しては、2016年10月15日よりキャンプ場・宿泊施設の事前予約が必須になった。
当初は3泊4日でWルートを歩くプランを立て、宿泊するキャンプ場について一泊目をパイネグランデ、二泊目をフランセス、三泊目をチレーノで考えていた。
なお、現在園内のキャンプサイトは政府機関のConafと民間企業Vertice PatagoniaとFantastico Surの3つの組織によって運営されている。(2017年時点)
一応どこもネット予約可能とのことだが、実際の空き状況を反映していなかったりフォームが整っていなかったりと利便性はいまいち。実際にネットで申し込もうとして事前予約を上手く取れたのはFantastico Surのみだった。
・Fantastico Sur社予約 https://www.fantasticosur.com/
・Verice社予約 http://www.verticepatagonia.cl/home
・CONAF予約 https://www.entradas.parquesnacionales.cl/login/index.php
パイネへの出発前日に他のキャンプサイトを予約しようとプエルトナタレスの各社オフィスに足を運んで見たが、日曜日はどこもクローズ。予約に関する通達が出されている以上、予約無しで突入するのもリスクかと思い、1日短い二泊三泊で再調整する事にした。
ちなみに予約したキャンプサイトはフランセスとチレーノで、どちらもFantastico Surによって運営されているが、価格改定があり前年より大幅値上げとなっている。予約したのは、空きがある内の最安値だったTent Single Premium FB。設置済み一人用テント(寝袋、マット、タオル等込)に朝夕食とランチボックスがつくプランでUSD 130で、キャンプ場にもかかわらず非常に高額だ。
本当はもっと節約したかったので、現地オフィスで改めて他のプランの空き状況を確認するとテントのみのUSD50があるとのことだったので変更を申し入れたが、ネット予約の際に支払ったお金(予約の為には支払い必須)は返金できないと言われた。Wルートをじっくり見てみるのが希望だったが、後日程も詰まっていたので、二泊三泊で可能な範囲でWをなぞる形にした。
そもそもキャンプ場の事前予約が必須なのにも関わらず、運営組織が3つに分かれて完全に独立して予約管理している実情は正直旅行者にとって不便極まりない。
必要装備の調達
プエルトナタレスの街中にレンタルショップ多数あり。
トレッキングキャンプに必要な装備一式を借りられる。
また、貸し出しを行なっている宿も多い。
トレッキングに不要な旅の荷物は、期間中は宿に置かせてもらっていた。
費やした経費
入場料の他、園内の交通機関も有料。山小屋に併設されている売店で売られている清涼飲料水やビールは市中価格の3〜5倍程度。
(参考) 1CLP(チリペソ)=約0.18円 ※2017年11月レート
- パイネ国立公園入場料 一人21,000CLP
- プエルトナタレス ~ パイネ国立公園(バス)往復 一人13,000〜15,000CLP
- パイネグランデ 〜 プデト間 (フェリー)片道 一人18,000CLP
- ラストーレスキャンプ場 〜 ラグナアマルガの入場ゲート (ミニバス )片道 一人3,000CLP (歩いた場合は7キロ 1.5〜2h)
トレッキングの記録
1日目
プエルトナタレス バス発 7:30
利用したバス会社はBuses Juan Ojeda。チケットは前日購入で往復13,000CLPまで下げてくれた。
他に3社ほどあったがどこも言い値は15,000CLPで、それ以上下がるかどうかは不明。
ちなみに前日購入したチケットを無くして当日朝再購入。15,000CLPを再度支払う羽目に。泣けた。パイネ アマルガまで2h。
道中、バスの車窓からはパタゴニアの雄大な大地をバックに、固有種であるグアナコたちがのどかに草を食む様子が見られた。
パイネ アマルガ着 9:30
エントランスにて入場料21,000CLPを支払った後、管理施設内で注意事項周知のためのムービーを見る。
トイレあり。
キャンプラストーレス方面へ行く人は、ミニバスに乗り換え。パイネプデトへ向かう人はそのままバスに引き続き乗車。
パイネ プデト着 10:30
パイネプデトからは、パイネグランデまで渡るボートが出ている。
11:00発のフェリー1便目でパイネグランデへ向かうはずだったが、まさかのボート人数制限で乗れず。
係員からは次の出発まで50minほど待ってくれと言われたが、結局その倍の1.5hほど待たされた。
(↓ここで少々文句を)
こういった部分に公園の運営の未熟さが垣間見られ、スケジュールを大きく狂わせる観光客泣かせになっている実態だ。そもそも、バスのキャパシティに合わせてボートを準備すべきで、キャンプ場の事前予約を必須にしてトレッカーのスケジュール管理を厳しくするのなら尚更だ。肝心の園内交通機関が時間通りにトレッカーをトランスファー出来ないのは言語道断で、日没までの時間義務が無くなって予約した高額のキャンプ場に辿り着けなくなる可能だってある。トレッカーの安全確保のためにも、運営者の早急な改善対応が求められている。
フェリー発(パイネプデト~パイネグランデ) 12:30
ようやく出発。眺めは文句なく最高。
パイネグランデ 13:15着
予定より1.5h遅れて到着。全速力でグレイ氷河へ向かって歩き始める。
ミラドールグレイ 14:40着
高台に出て見渡すと、湖には氷河の断片が流れ着いているのがわかる。また、遠くにはグレイ氷河が見渡せる。
グレイキャンプ 15:45着
山小屋併設のキャンプ場。ここからグレイ氷河方面へ進んでいくのだが、ルートの接続口が分かりにくかった。
グレイ氷河 16:20
グレイ氷河近くの展望台と思しきところで10分ほど氷河鑑賞。
氷河はずっと山の奥の方まで続いているようで、遠近感が分からなくなりそうなほどスケール感にあふれた景観だった。
ここで元来た道を折り返す。
グレイキャンプ 16:40 ~ ミラドールグレイ 17:50 ~ パイネグランデ 19:10着
この日のスタート地点へ戻って来た。ここから予約したキャンプフランセスへ向けて歩き始める。
日没は21:00で日はまだまだ高い。ただ、時間的にトレッカーはまばらになってきた。
キャンプイタリアーノ 21:05 ~ キャンプフランセス 21:35
ライトが要らない明るさが残るうちにギリギリ到着できた。
テントや寝袋は新品に近く、マットレスもふかふかなので快適。ずっと早足で来たのでかなり疲れた。
遅いディナーを食して直ぐに横になり、クタクタになった心身を癒す。
2日目
キャンプフランセス 8:25
朝ご飯を食べて出発。
キャンプイタリアーノ 8:55 ~ ミラドールフランセス 9:45
Wの真ん中の頂点のブリタニコに向かう途中にある展望台。左手にはパイネグランデ。雪崩が轟音とともに断続的に起きていて、迫力満点。そして右手にはクエルノスのシルエットが太陽を背にして浮かび上がる。振り返ると、遥かにエメラルドに輝くラグナアマルガが望める。
ここからミラドールブリタニコまでは往復2〜3hほどで行ける距離だが、後の時間が詰まってトラブルが起きるのは嫌なのでここで折り返す。
キャンプイタリアーノ 10:25 ~ キャンプフランセス 10:55
昨夜のキャンプ地。置いておいたザックをピックアップアップ。
キャンプクエルノス 12:05着
近くの川辺でランチ 12:20発
チレーノ ラストーレス分岐 14:40
地図とは若干位置が異なる様子だった。地図はかなりラフで他にもルートに設置してある看板(より正確)と時間距離が異なっていたりとあてにならない部分があった。
キャンプチレーノ 16:30
事前に予約したこの日のキャンプ地に到着。シャワーを浴びてぐいっと一杯。最高。
3日目
キャンプチレーノ4:00発
夜空に星が煌めく中を、朝日に染まるトーレスデルパイネを見られることを期待して出発。
キャンプトーレス 4:55
ここを過ぎた辺りから所々急登。
ミラドールトーレス 5:30着
到着。視界はクリアで、白み始めた空の下、トーレスデルパイネの三本槍がはっきりと見える。
絵画の中にいるかのような静寂の中、寒さに耐えながらじっと時が流れるのを待つ。
6時を少し過ぎた頃、じわじわと槍の先端が光を帯び始めた。光はゆっくりと岩峰に染み渡り、その輝きを増していった。同時に、ここ数日間心に立ち込めていた黒い靄が一気に吹き飛んでいった気がした。
ミラドールトーレス 6:45発 ~ キャンプトーレス 7:15 ~ キャンプチレーノ 7:53着
昨晩宿泊したキャンプ場でシャワーを浴びて朝食。そしてテントで荷造りして出発。
一眠りしたい気分だったが、多分起きられなくなるので我慢。
山を下る。
キャンプチレーノ 9:55 ~ クエルノス トーレス分岐 10:25 ~ キャンプラストーレス 11:15
のんびりと坂を下りラストーレスキャンプ場に到着。
アマルガゲートまでのミニバスは1日4便あるようで、次は14:00発。
距離は7キロほどあるが、暇なのでアマルガゲートまで引き続き歩くことにした。
アマルガゲート 13:32着
無事に(ほぼ)Wルートを完歩。
14:30 復路のバスでプエルトナタレスへ
事前に購入しておいたチケットを運転手に提示し、無事にバス乗車。
終わりに
天気にも恵まれ、パイネ国立公園を存分に楽しめた3日間だった。朝日に染まるトーレスデルパイネの岩峰やパイネの山々の展望、氷河やラグーンなどの見どころを堪能でき、運に恵まれたことを感謝したい。
他方、 2011年の山火事もあり、旅行客の管理を厳重化しようという方向性は理解できるが、旅行客に綿密なプラニングを要求する割には公園の運営に不備な点が多く、観光客にとって鬱憤が溜まりかねない部分も存在する。
また一部キャンプ場の法外な値上げについても、捉え方によってはツーリストの足元を見ているように感じられてしまう。自然環境に最大限配慮しつつ、観光客への最低限の利便性も確保できるよう、バランスの取れた運営を目指してほしいと感じた。